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「メリー!私次のお人形この子がいいわ!」
そうクリスに言われ──厳密に言うとテレパシーなので頭に直接響いてくるなどと表した方が良いのだろうが面倒くさいのでこう表記する──メリーに抱かれた彼女が指差す方に目を向ける。目に入った人形に全員言葉を失った。今日はクリスの媒体である人形を新しく入手する為にイギリスはロンドンのボンドストリートの脇にある路地を入った小さなドール専門店を訪れていた。
「………それが、いいのか?クリス」
「えぇ、この子がいい」
メリーが眉間に皺を寄せながらクリスに訊ねると即答で返される。その声音はウキウキと心底楽しそうだ。
「…クリス、それはどうかと思うぞ…」
「俺もジャックに賛成だ…」
苦笑をこぼしながら言うジャックとリコにあら、どうして?こんなに可愛いのに、と媒体である人形の首を傾げてクリスは言った。
そんな彼等を余所にクリスが気に入った人形を手に取ったジルが言う。
「ふむ。クリスもまた良いものに目を付けましたね。凄く、関節の機能性が充実してますよ、このお人形」
人形の腕やら関節やらを動かしながら言うジルにそうでしょう、とクリスが楽しそうに返した。
その人形の引っかかることもなく滑らかに動く関節などの作りは申し分なく完璧だった。
「しかし、問題は頭部ですねぇ…」
そう、先程からクリス以外の全員が購入を渋っている理由はその人形の頭部にあった。
「…流石に頭部が眼球な人形はな…」
持ち歩きたくない、と零すメリーの言葉のまま、人形の頭部は眼球を模してあった。日本の有名な妖怪アニメの親父同様に目玉から直接体に繋がっている。
そんな人形がフリルだらけのゴシック調の衣装を着ている様はなかなかにシュールであり目立っていた。
「もう!私はこの子がいいのよ!それじゃ駄目なのかしら?」
拗ねたように返すクリスにメリーは小さく息を吐く。
「それじゃあ、もう一つ人形を選んでこい。こいつは人形のメンテナンスの時用でなら、買ってやる」
その言葉にクリスはわかったわ、と嬉しそうに返してリコとジルに連れられもう一体別の人形を探しに言った。
例えどんな奇抜な人形を選んでこようとも結局メリーは妹に甘いのだ。
「…ったく、甘やかしすぎじゃねぇの?」
「……妹を甘やかして何が悪いんだ」
隣に立ったジャックにふん、と鼻で笑いながら見やるメリーの表情は穏やかだった。
(愛しい君の為ならば)
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