黒歴史の散文

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ジルの愛の鞭。 並ではなく大盛りな課題。 能力を制御するというプレッシャー。 能力を制御する為の訓練。 訓練時のメリーの空気。 キレたクリス。 その他もろもろエンドレス…… 「そういうわけでさ、わかってくれる?俺のストレス三昧なこの生活!」 俺は最近ずっと溜まりっぱなしだった鬱憤を、何時ものように店で電話番をしていたっぽいジャックに向けて思う存分吐き出していた。 「おまえそんなこと言いたいがために逃げてきたのか」 「失礼な、ちゃんとメリーに許可もらったぞ!」 せっかくの穏やかな時間に迷惑極まりない邪魔だ帰れ訓練しろ、とでも言うようなジャックの目が俺を見下ろす。意地でも帰ってやるもんか邪魔してやる訓練は後でするんだよ、という目で俺は睨んだ。 やがてジャックは視線をそらしてため息をついた。ため息をつきたいのはこっちだ。 あの何時もにやにやと小馬鹿にしたように笑うジャックに勝てたようで少しだけ嬉しくなったが、憂鬱はそんなもんじゃ消えなかった。 というかさっきのため息は「負けました」の敗北のため息ではなく「仕方なく譲歩してやる」のやっぱり見下したため息だった。絶対。 さっきのジャックよりも盛大にため息をついてから、カウンター横のアンティークのソファー(三人掛け)に寝転ぶ。 「おい、怒られんぞ」 母親みたいなジャックの言葉に、いいんだよ別に、と返した。 「あー日本行きたい。そうだこの店を日本に移せないかな」 「そりゃ無茶な話だろ」 メリーがこの国以外を拠点に出来る奴かよ、と口の端を吊り上げるジャックに今度メリーに告げ口してやろうと心に決めて古めかしい柱時計に目をやった。店の雰囲気にマッチしている柱時計は、そろそろ迎えが来る頃だと告げていた。もう一度ため息をついて上半身を起こす。 名前の知らない道具や調度品が視界の端に入った。それらを目で追っていると、頭上から降ってきた大きな手に乱暴に頭を撫でられた。首が不吉な音をたてながら曲がる。地味に痛い。 「まあ、人間ってのは環境が変わるとストレスを感じやすいもんだからな」 「ジャックも人の子だったんだな」 「喧嘩売ってんのかてめぇは」 髪を引っ張られて思わず悲鳴がもれた。よし、メリーに言って減給してもらおう。 (そろそろ訓練を再開したいんだが?) (リコ、早くおいで) (げ、メリー、ジル…) (さっさと行ってこいよ) (この空気が好きだとは言わない)
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