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あのこから電話がこなくなって15年、私はすっかり頭が白く染まり、背も曲がってしまった。
金縁のレンズが大きく、目が三倍くらいに映る老眼鏡も身体の一部だ。
もう街からもあのこのポスターの存在は薄れ、警察の捜索も断ち切られた。
それでもずっと、私には鈍く、やりきれない悔しさが残っている。
あの会話、“公衆電話”という履歴が愛しい
入学したてのピカピカのランドセルを背負い、毎週金曜日になると、“公衆電話”の文字が1つずつ増えていく。
孫の声を聞き、温かい気持ちになる
孫の元気な声を聞くのが生き甲斐だった
ぼうやの家庭は崩壊状態で、父親はパチンコに明け暮れ借金まみれ、母親は毎晩違う男を連れ込みその男はぼうやを煙たがり暴力を振るう
母親は止めようともせず、“お前が悪いのよ”とぼうやを追いつめ、動けなくなるほどに殴られ続け痙攣してさえいても息子を庇おうとはしなかった。
それでもぼうやは母親を愛し、父親の顔色を伺っては父の大好きな羊羮を学校帰りに買って、帰りが遅い父親の机においておく。
両親思いの良い子だった
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