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雲に隠れた満月がひっそりと照る寒い夜、彼女が帰ってくるまでに暖められ、加湿器もセットされた部屋に、僕達はいた。
キングサイズのベッドに浮かない表情のまま彼女は腰掛け、何か考え込んでいるようだ
僕は隣に座り、彼女の肩に腕を添え少し引き寄せ
「さっきから浮かない様子だけど、どうかした?」
と聞くと、彼女は目も合わさず震える声で言った
「…私、見ちゃったの。」
少し驚いたが、浮気なんてしないしもしかして、と冷や汗を流す間もなく
「…私に隠し事しないで。不安にさせないように、なんて気をつかわなくていい、我慢しなくていいからお願い、ホントの事を言って??」
気付かれていた
今まで堪えて(コラえて)きた何かが解されたようでつい本音を言いそうになったが
「なんのこと?オレ、なんにも隠し事なんてしてないよ?心配すんな」
少し笑ってみせたつもりだった。
だが抑えていた涙がこれ以上抑えきれなくなってポタポタと目から溢れ出した
「泣いてるの??」
彼女は一瞬が戸惑ったが彼を強く抱きしめた
「無理しなくていいんだよ。一緒に、闘っていこう。」
彼女が見たものは、僕が普通の生活をするために欠かせない、大量の処方薬だった。
この薬を処方したからといって、決して病状が良くなるわけではなく副作用も僕の身体を傷めつける
日々減っていく残りの薬の量が、僕に残された命のように思えた。
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