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「どうしても行っちゃうの?」
まだ朝靄がうっすらとかかる時間帯ある大きな門の前で綺麗な金髪をした女の子が目を濡らしながら目の前にいる黒髪の少年に訪ねる。
お互い12、3歳ぐらいであろうまだ幼さを感じる少女は少年が頷いて返事を返すと俯いて溢れ出す涙をこらえていた。
「こらこらソフィア。カイルが困っているだろう。
これが一生のお別れじゃないんだ。
カイルは数年で旅を終えて帰ってくるからそれまでの辛抱だよ」
ソフィアの横にいる口髭を蓄えた男性――オーディンは我が子の成長が嬉しいやら少し寂しいやら複雑な心境に陥っていた。
「ソフィア…」
黒髪の少年―カイルが初めて口を開いた。
今まで話さなかったからか声はやや嗄れている。
「一つだけ好きなお願い聞いてあげるからそれで許してくれる?」
カイルの透き通るような赤い瞳がソフィアをみて優しげに笑う。
ソフィアは一瞬キョトンと呆けてしまうが顔いっぱいに精一杯の笑顔を貼り付け――
「じ、じゃあカイルが帰ってきたら私と――」
物語はここから始まった。
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