7人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ~終わった終わったぁ」
チャイムが鳴ると同時にあくびが口をついて出た。ガタガタとみんなが教科書をしまったり席を立ったりし始める。
世界史の先生の話はなんといっても退屈だ。横文字の地名なんかは全部呪文のように聞こえる。
だが、こんな面倒くさい毎日もそろそろ終わりだった。
高校三年生。大学受験も常に考えておかなければならない時期である。
一応志望校は決まっていて、成績もなかなかだから指定校推薦を狙うつもりだ。
「和己、和己!」
あくびの口が閉まる前に、綾人が駆け付けてきた。
「和己~!俺わかんねぇわ、世界史!教えてよ~」と泣きそうな声を上げる。
「わかんないも何も…覚えるだけだろうが世界史なんて」
「だぁってよぉ、じゃぁ…例えばなんで産業革命が起こったかとかわかんのかよ?」
突然の質問に和己はピンと来なくて数回まばたきをした。
「…な、なんでって…お前いちいちそんなことまで考えて世界史受けてんのかよ!?」口が開いた。
「深いとこまで理解しないと不安なんだよ~お前は内申いいからイイけど、俺は入試テスト一発だからさ」
しょうがないのでアドバイスしてやることにした。
「そんなにわかんないとか言うなら…お前授業中寝るなよ!」
「いやだって眠くもなるだろ!…ったく、わかってねぇなぁ!ダメだダメだ 優等生は」
そう言ってどこかへ行ってしまう。
「あ、おい…!」
さすがに冷たくしすぎたかと思い、慌てて引き止めると、綾人はこっちを向かぬまま手をちょいと挙げた。
「今日一緒に帰ろうぜ!」
和己は内心ホッとして、綾人に見えないのを承知で手を振り返した。
「…おう!」
最初のコメントを投稿しよう!