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和己と綾人はいつも一緒に帰っている。今日は綾人に付き合ってもらって本屋に行こうかな。イイ問題集が家にないのである。定期テストがそろそろなのだ。大学にすんなり受かるように、いまからみっちり勉強しておかないと。
去年までは待ち合わせ場所は昇降口だったのだが、最後の最後で同じクラスになれたのでそのまま帰れるようになった。
「あー、綾人、俺今日寄りたいところが…」
「もちろん、知ってるって!」
綾人がにこにこ笑った。言った覚えはないのだが…
「神社行くんだろ、神社」
「…はぁ?」
「はぁ、じゃねぇよ!まぁ、どうせ本屋にでも行って問題集でも買いに行くつもりだったんだろうけど」
さ、さすがだ、綾人…
「今日神社でお祭りだろうが」
言われて、途端にぶわっと屋台やら提灯やらの映像が脳に流れ込んできた。
「あ!そうか!やっべ、忘れてた…」
綾人とは幼馴染み。家も近い。二人の家から大体歩いて五分くらいのところに妙蓮寺という神社があって、今日はそこで年に一度の夏祭りの日なのだ。毎年おいしいお好み焼きの屋台が出る。
「彼女でも出来りゃあよ、もうお前ともお祭り行かなくていいのになぁ~」と、綾人がそんなことを言った。
「おーそりゃこっちのセリフだよ」
口を尖らせて言い返す。
「まさかお前浴衣来る?」
「いや、めんどくさいわ。大体野郎二人で浴衣ってどんだけだよ」
それで綾人はちょっと笑って、
「まぁね。…じゃ、お堂の前で。他にも友達呼べるだけ呼んで盛り上がろうぜ」と言った。
気付いたらもういつもの分かれ道に来ていた。和己はここを右に曲がる。綾人は左に。話しながら歩いてくるとどこまで来たのかわからなくなるものだ。
「じゃ、またな!」
綾人はわくわくしているのを押さえ切れないように、その曲がり角を駆けていった。
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