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薄目を開けて、俺は気づいた。
これは夢枕の世界ではない事に。
隣のババアが、ずっと俺の手を握っている。
涙を浮かべて。
気持ち悪いから、振りほどきたいけど、力が入らない…
…いや。
手があんまりにもあったかくて振りほどきたくなかったのかも。
「お母さん、もういい加減家に帰ったら?ずっと付き添ってたでしょ?田中さんも意識取り戻したし。あとは、病院のスタッフに任せて。」
マリア。
「でも、麻里子。この子が心配なんだよ…もうちょっと、ほんとに気がつくまで。お願い!」
「っとにしょーがないなぁ…お母さんが、そんな人に親切にするとこなんて、見たことないのに、どーしちゃったのよぉ?」
「言っただろ?恩人だって」
「はいはい。田中さーん。わかりますかー?ここ、どこだかわかりますかー?」
マリアが聞く。
眩しいけど、思い切り目を開けた。
「…び…ょうい…ん…?」
「そうですよー。気分はどうですかー?どこか痛いところ、ないですかー?」
「…ちょっと…体のあちこち…痛いです…」
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