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美里が教室の扉に手を掛けると、やはり教室に鍵はかかっていなかった。
そのまま美里が教室の扉を開けきると、そこには美里の予想通り、長嶺らしき少女がいた。
「こんにちは。長嶺さん」
長嶺は、ゆっくりとこちらを見る。
綺麗な目をした、美少女だ。
「おい、離れろ」
「…嫌だ」
俺の後ろに、長嶺から隠れるようにして身を縮ませている稲葉が多少不快だ。
本当にこいつ、大丈夫だろうか。
こいつをここまで怯えさせる長嶺のがよっぽど戦力に見えてくるよ。
「何。私に何か用かしら」
「ええ。『総合部活戦争』って知ってる?」
「知らないわ」
「総合部活戦争っていうのは―…(以下省略)…―わかった?」
「ええ、理解したわ。それで?」
「だから、長嶺さん!あなたにも是非この軽音部に入部して一緒に戦って貰いたいの!」
美里は長嶺の座る席まで歩いていくと長嶺の手を両手で握りしめた。
「…天月さん。あなた宇宙人というものを信じるかしら」
「…?うん、まぁ、勿論」
「そう。…あなたからは小宇宙のような波動が伝わってくる。それは未来への希望を表す人間としての可能性。あなたにはまだ人間として可能性が残っているように感じるわ。それはあなたが現状に満たされず、常に未来へと可能性を求めているから」
「・・・・・」
―…なんか、怪しい空気が漂い初めてきたな…
「天月さん。私に、私の存在価値を求めさせて貰えるかしら?いえ、求めても良いかしら?あなたとなら私、未来を、未来への可能性を、波動を、極めていける気がするの」
…最後のは極める必要ねーだろうよ。
―…まぁ、独自の世界を切り開いてらっしゃるし、折角勧誘が上手くいきかけているのを台無しにするのもあれだ。
ツッコむのはあえて我慢しようか。
「でもやっぱり、私に未来を求める価値なんて…無いわよね」
知らんがな。
「ええ、そうね」
そこは否定してやれよ!!
同意すべき所では決して無い!!
「…天月さん」
「…長嶺さん」
「…入部します…」
「・・・・・」
「はぁー!?今一体何がどうなったんだよ!?全然わかんねーよ!!以心伝心でもしたの今!?」
「あら、貴方からは汚れた波動を感じるわ。近寄らないで貰える?」
「嫌われてる!!」
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