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―…夏。
夏といえば、かなりきつい部活の練習に夏休み。
野球ならば、甲子園という一大イベントがある。
普通、夏休みといえば体育会系・文化系という区切りに関係なく(部活のやる気によるが)練習というのは、過酷を極めるはずのものだ。
事実、この学校・市立月林高等学校のグラウンドでは、この暑い中、野球部やらサッカー部やらが、体育館ではバスケ部やらバレー部が、地獄のような特訓に、興じている訳である。
「明人。そこのコーラ取って」
体育会系の部活に、3年間を注いでいる生徒達は、つくづく立派だと思う。
「…ほらよ」
「サンキューベリーマッチョ」
「うるせー」
文化系といえども、熱心な部活はちゃんと、苦しい練習をこなしているはずなのだ。
コンクールやら発表会で、活躍する為に(多分)。
―…なら、なんで俺達はこんなにダラダラしているのだろう。
「…美里よ」
「んー?」
比較的綺麗な校舎の裏側、太陽が直接当たる事は無く、程よい程度に日光が入る、この部屋。
1つだけある窓は開いていて、目の前には大きな木々が日光の侵入を簡単には許さない。
「俺達は何部だろうか?」
「はぁ?」
俺は、ギターを抱える俺の隣で、椅子に座り、先ほど渡したコーラを飲みながら、ファッション雑誌を読んでいる少女・天月 美里(2年)に声を投げた。
天月 美里。
彼女はこの部の部長でもある。
「何部って、一応軽音部でしょ」
「一応じゃない!ここはれっきとした軽音部だ!お前、天月 美里が創部した軽音部だ!」
そう。
時を遡れば1年前、俺、凪 明人は、ある1人のクラスメートから声をかけられたのだ。
「あたしと一緒に軽音部を創らない?音楽の素晴らしさを、この学校に教えてやろーよ」
少女は、黒いショートカットに、線のように絞られた肢体、そして雰囲気。
第一印象としては、誰もが『活発そうな女の子』と印象づけるであろう雰囲気を持った少女に、部活の勧誘(?)をされたのだ。
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