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人だかりの中はやはり、危なく、どんどん人の波に押されて、圧迫されていくような感じだった。
柔道部のでかい体や、野球部の堅い体。体育会系はやはり、体の出来が違う。
俺なんて、軽く吹っ飛ばされた。
「おい、コラ、このデブ!!」
横から押し掛けるようにして入ってきた柔道部の奴に吹っ飛ばされた俺は、そいつに向かって、言った。
「ああ?なんか文句あんのかよ」
「…いや、ありません。すいません」
―…正面突破、強行突破はどうやら、俺みたいなのでは無理という結論に至った。
結局、俺は輪の外に出て、美里を待機させている広場の端にある自販機の横まで戻った。
「あら、おかえりなさい」
「…ああ」
「偉そうにあたしを此処に置いてズケズケとあの人だかりの中に入っていっていたけど、随分早いご帰還ね」
「…色々あったんだ」
「そ。まぁ、あそこは謝って正解だったんじゃない。仮にあそこで柔道部の人と明人がやり合っていたら今の明人は恐らくいなかったわよ」
「殺されていたってか!?」
確かに。
悔しいが、反論は出来ない。
…っていうか、しっかり見ていたのな、お前。
情けねぇ俺を。
「大丈夫!アンタにそっち方面は一切期待してないから!ね?」
「もはや何のフォローにもなってねぇよ!!」
―…とにかく、幾ら頑張った所であの人だかりに現在俺じゃ入るのは不可能だから、あの人だかりが無くなるまで、安全なこの自販機横で美里と待機する事にした。
目の前で、椎名は軽々と大きな奴らの体をかわして抜けて、すらすらと人だかりの中心へと消えていった。
「…ふぅ。椎名君を誘えば良かったわ」
「それは今の俺には一番言っちゃいけない事だよ」
プライドずたずただよ、くそ。
俺は自販機から購入したサイダーを喉に流し込んだ。
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