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―…まぁ色々気になる事項はあるが、とりあえず美里のとこに持っていくか。
あいつが、一応、軽音部の部長然り代表である訳だし。
納得いかないが。
「美里。これ」
「…何よ、それ」
「あの人だかりの原因。『総合部活戦争』なんて大それた行事の応募事項と参加届けだってよ」
「総合部活戦争…?」
美里は不思議そうな顔をする。
その反応は普通だ。いきなり『総合部活戦争』なんて意味のわからない事を言われて、素直にその意味を理解するような要領の良すぎる人間は恐らくいないだろう。
それは、この天月 美里にしたって、例外ではない。
「これを読めばわかるよ、多分」
俺が差し出したルールブックと、同意書、参加届けを美里は一気に奪い取ると、それを独自に読み崩していた。
「…成る程。そういう訳ね」
そういう訳ね…って、わかったのかよ。
「当然よ。要は月林の部活全部で部活名が刻まれたバッチを奪い合えって事でしょ」
「…おぉ」
思わず、声が漏れた。
再度普通に読んでみると、誰でもわかるような単純明快な優しいぐらいの説明だったが、どうやら、さっきの俺は頭が上手く回っていなかったらしい。
いや、あの中で動揺していたのは恐らく俺だけであっただろう。
美里は、ある程度内容は把握したらしく、参加届け以外のルールブックと同意書を俺に渡すと、言った。
「よし!参加するわよ」
「はぁ?お前、こんな危なっかしい行事に参加するなんて馬鹿なのか?」
大体、参加届けの記入欄自体は5人分だけど、その欄外の追記に、人数が収まらない場合は、2枚目の参加届けに追加の部員名を記入し、1ページ、2ページと枚数をちゃんと記入する事、と丁寧に書かれているだろ。
「軽音部は俺達二人だけだぞ?ただでさえ身体面のハンデがあるのに、人数のハンデまで背負うと勝目なんてねーよ」
俺は、冷静に分析した結果を、無謀な美里に説明した。
しかし、美里はそんな言葉を素直に受け入れるような素直な子では無く、寧ろ、更に闘争意欲を掻き立てられたようだった。
「人数なら集めれば良いのよ!」
「…アテはあるのか?」
正直、参加なんてしたく無い。
勝目なんて、少しも無いのだから。
「うん。大丈夫」
美里は自信ありげに頷く。
その自信と勇気を俺にも少しは分けてくれ。
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