シュルームの向日葵

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その少女の名はサラフィア。 このウルブス半島の古い言葉で、向日葵の意味を持つ名前の少女は、彼女の生まれたシュルームという里の名前に因み、こう呼ばれた。 シュルームのサラフィア。 或いは、シュルームの向日葵と。 事実、サラフィアは向日葵のような少女だった。 誰とでも打ち解け、賑やかな事がある場所には必ず顔を出した。 人が口を開けばそちらに顔を向け、常に外を出歩き、夜を余り好かなかった。 さらさらと流れるような髪の毛は輝く黄金の色で、肩の辺りで切っていて、いつも上品な紫のリボンで一つに結っていた。 目はくりくりとして大きく、瞳は焦げ茶色でいつもきらきらと輝いていた。 顔は小さく顎はすっと尖っていた。 毎日太陽に当たっているから、肌は程よく日焼けしていた。 鼻は通っていた。 唇は、勝ち気な印象を与えるもので、実際彼女はその時代の少女達より勝ち気だった。 その彼女には親同士が決めた許嫁が居た。 名前はマルコ。 シュルームで唯一の商人の息子で、家が比較的裕福な農家のサラフィアと家の間の釣り合いはついた。 毎日のように遠くに買い出しに行くマルコだったが、サラフィアとは不器用ながらも距離を縮めていた。 焦げ茶色の髪に同じ色の瞳を持ち、サラフィアよりも日焼けした肌と、貧弱な肉体を持ったマルコ少年は、平均より臆病だったが、そんなマルコにサラフィアも好意を抱きつつあった。 そんな時である。 シュルーム一帯を統べるエダントは隣国の都市国家バランと組み、南の大国ウルブスを攻略する。 その戦いにより交易路は寸断され、買い出しに出ていたマルコはシュルームに戻れなくなってしまう。 そこへ、エダントによる招聘の命令が下され、若い男は殆ど戦に駆り出されてしまった。 男に代わり森に入っていたサラフィアが風になびく銀色の髪を持つ美しい少年に出会った事からこの物語は始まる。 少年の名はロデリオ。 最高の剣の使い手にして、戦の神マスラオネに護られ、繁栄を謳歌し、善政を敷くウルブスの王子だった。 彼の緑色の瞳が、サラフィアの焦げ茶色の瞳を吸い込んだところから、この物語は始まる。
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