プロローグ (ゲーム内)

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日差しが眩しい。 夏は過ぎ去ったとはいえ、その名残はあちこちに見受けられる。 それは道端に落ちている一本だけの花火だとか、明らかに周回遅れで鳴き始めた蝉だとか、隣を歩いている幼馴染の夏服だとか。 『すーくん、何か難しそうな顔してるね』 音が弾性波として、鼓膜に伝わる。この音は比較的聞いていて心地良い部類に入る音だ。 何と比較して、っていうのは説明しにくいけど。少なくとも、喧しい着メロよりもいくらか気分は良い。 『そうか? どんな顔に見えた?』 『んとねー…永久機関を模索している科学者みたいな顔してた』 それは永遠に解けないテーマだ。 『なるほど、色んな矛盾とかでそりゃ難しい顔になるだろうな。鏡貸せ』   『鏡? 別に良いけど…ちょっと待ってね』 ごそごそと鞄を漁りながら、ついでに胸も揺らしているのは幼馴染の有園白夜(17)。 性格は少々世話焼きな部分と、ドジな部分があるが、それはおでんに付いてくる芥子みたいに、いつのまにか暗黙の了解として、彼女には必要不可欠になってしまっているものだった。
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