プロローグ(現実世界)

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現実とは隔離された世界の中。 さながら、山奥の清流にしか生息出来ない岩魚や山女のように、人工的に組み上げられたプログラムの中にしか存在出来ない虚構の美少女達。 そんな彼女達と、画面越しの交流だけじゃなく。 触れたい、声を聞きたい、一緒に登校をしたい、お弁当食べたい。 照れさせたい、時には喧嘩もして、雨降って地固まりたいと思うのは、至極全うな思考であると思う。 古来より雨月という言葉がある。雨の中で見る月。 中秋の名月の時期というのは雨が降っている事が多く、月を見る事は難しかった。 そこで考え出されたのが、月を模倣し団子を捏ね、その団子から、雨雲の向こう側に光輝いているだろう丸い月を想像して楽しむ雨月だ。 それは辛くて、苦しい、思い通りにいかない現実というものに対抗した知恵だと俺は思う。
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