プロローグ(現実世界)

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いつからだろう。学校が楽しくなくなったのは。 いつからだろう。人の笑顔が気持ち悪く見えるようになったのは。 まずい。 そう思った時にはいつも遅いんだ。 何かを考えないというと思うことは、同時にそれを考えるということで。 思考の回路に、それが顔を出す。 それは人の形だ。 ふたつの小さな影。 一方は太陽のように朗らかに、一方は月のように優しく、それでも二人はどちらも笑顔で。 真ん中の夕焼けで笑っているのは…俺。俺。俺。 笑って笑って笑って…笑いながら、泣いて。 「二次元最高ーーーー!!!いゃっふうう!!!」 思わず大声を出す、それらは掻き消えて、叫んだ自分の声だけが、情けなく鼓膜に張り付いた。 布団を大袈裟に被りなおす。そのまま、眠気が訪れるのを震えながら待った。 睡魔が現実から連れ去ってくれるのを、俺はひたすら待った。
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