第一章

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目が醒める。 と、同時に夢からも覚めた。 昨夜寝る前に、考えた事がいけなかったのだろうか。 支離滅裂な内容の夢の登場人物の中に、久しく登場していなかった人名があった。 内容を思い出そうと記憶に手を伸ばすが、掴んだ瞬間にそれは霧散する。 残るのは目に見えない小さな水滴のような細かな後悔と、箱缶入りクッキーの底に溜まっている欠片みたいな…幸せの残り滓だ。 「……ちっ」 自分の見てしまった夢については誰に腹を立てれば良いのか不明だったが、とりあえず舌打ちしておいた。 このストレス解消方は余りにも消極的で後ろ向きだが、壁を殴るより安上がりだ。 少なくとも手の皮がズル剥けになるようなことはない。 「……くあ」 あくびをしながら、俺は起き上がって、壁際に視線を移す。女の子が飛びっきりの笑顔を俺に向けていた。 まぁ、ポスターなんだけどな。
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