第一章

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朝の日差しが、風景を優しく彩る。季節は冬。 デンプン精製工場だった瑞々しい若葉は影も形も無く、骸骨のような街路樹が厳しく立ち並んでいる。 すれ違う人々の顔は一様にしかめ面。不景気+寒気=鬱。 これはいけない。 鬱の気に中てられる前にポジティブな発言をしないと。 「ああ! 太陽爆発しないかなあ! 隕石落ちて来ないかなあ!! 富士山噴火しろ!! 磐梯山も噴火しろ!! ばんだいさーん!!」 お…? ばんだいさんって、万々歳に似てないか?  そんなくだらないことを考えながら、俺は遊歩道をてくてく歩いていく。 この歩道は二日前に舗装が終わったばかりで、目新しいコンクリのタイルが、太陽光に反射キラキラと輝いている。 女の子の顔もたまに同じようにキラキラ光ってるよな。あれってラメとかいうやつらしい。 ラメぇ! お顔光っちゃラメぇなのぉ! 「らめぇ!」って言葉を作った奴に敬礼しとく。おかげで今日も下半身に血が巡る。 にやにやしながら、俺は遊歩道を歩いていく。 端から見れば、いや端から見なくても、頭のおかしい人以外の何者でもない。
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