第一章

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一年前、桜舞う入学式…の時は何も無かったんだけど。確かGWだ。 道端で犬が死んでいた。その傍らに楠木が立ち尽くしていた。 『こいつは幸せだったんですかね』 表情からは何も読み取れなかった。ただ気色悪い笑顔を浮かべていた。 『知るか。あの世でそいつに聴いてみろ』 『あはは、そうします』 一緒に埋めに行った。楠木は線香とドッグフードを買っていた。 『ほんとは花とかも買ってやりたいんですけど、お金が無くて』 『それは残念だったな』 クールに歩いていたはずなのに、俺は何故かラッピングされた花束を持っていた。 三千円もしやがった。ぼったくりとしか思えない。 『すみません、わざわざ』 全くだ。お陰で新作のゲームが買えなくなったじゃないか。 『あ、スコップとか必要ですよね。どうしよう…』 『それは残念だったな』 ニヒルに歩いていたつもりなのに、俺はいつの間にか空いている方の手にスコップを持っていた。 『すみません、わざわざ取りに戻ってくれたんですか? 汗だくですよ…』 全くだ。大家に頭を下げる羽目になったじゃないか。
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