第一章

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腐れ縁とは、腐敗するような長い関係を一緒に過ごした仲。 という意味で世間的にはポジティブに取られている。 この言葉は元々鎖縁という言葉から来ている。鎖のように切っても切れない仲。 しかし俺と奴の間にこそ、腐れ縁という言葉は例外的に当てはまる。 文字通り、「腐っている」からだ。悪臭を放ち、黴の温床になり、湿度が高ければ訳のわからない茸だって生えてくる。 とまあ、色々御託をひねったけど、要すればに二言で説明がつくんだ。 俺は有実を嫌悪し、彼女も俺を嫌悪している。 何故そうなったかっていうと……。 「…なんで俺が回想しなくちゃいけないんだ。甘えんな! 自分でそんくらい考えろよ!」 「おおっと、青天の霹靂。なんの脈絡無く怒鳴る先輩も素敵っす!」 有実と目線が重なる。汚物を見るような目。俺も牛乳をふき取った雑巾を見る目で見返してやる。 端正な顔立ち。俗に言う可愛いというやつだろう。そんな事実も、この女の馬鹿さぶりに拍車を掛けているようだ。
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