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「じゃあ、俺は便所コオロギの取れた片足を見るような目で見ますね」
楠木は彼の言う、便所コオロギの取れた片足を見るような視線? を有実に向けた。
ってか、モノローグ読むんじゃねえよ…。
「あ、あははー。いや、ほんと訳わかんないけどまあいいや。行こ、楠木くん」
困惑しているようだが、有実はめげずに楠木の手を取って歩き出そうとする。
俺としては、不快な奴と喧しい奴が手を取り合って消えてくれるなら願ったりだ。
「いえいえ、俺は貴女と登校する気はありません。どうぞ他を」
楠木が真実の手を振りほどく。彼女はそこで初めて本当に困惑したようだ。
当然だろう。
今まで自分が声を掛けて振り返らなかった男など、いないに違いないのだから。
「え…どうして。なんで、わかんない…私可愛くないかな」
「いえ、とても可愛らしいと思いますよ。けれど、間先輩に挨拶をしないような人とは並んで歩きたくないんです。他をあたって下さい」
飛びっきりの笑顔で、痛烈に言い放つ楠木。俺は急激にバツが悪くなってしまった。
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