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「…そっか。じゃ、いーや。またね楠木くん」
言い残すと彼女は俺に氷みたいな一瞥をくれてから、他の男の元へ走っていく。
俺はため息をついた。
「…なんで一緒に行かなかったんだ?」
「うーん、嫌いなんですよあの人。毎回しつこく誘ってくるんですよね」
「わかんねえな、不細工って訳じゃないだろうし、何が不満なんだ?」
「先輩があの人を嫌いだからです。それだけです。それに、あんまり良い噂聞きませんし」
「あー…男とっかえひっかえしてるって話か?」
苦笑いしながらそう尋ねると、
「はは、まあ…それだけじゃ無いんですけどね」
楠木は少し困ったような笑顔を浮かべた。珍しい表情だ。
「聞かないんだな、俺と奴のこと」
「ええ、聞きません。過去にどんな女と乳繰り合ってようが、先輩は先輩ですから。俺の気持ちは変わりません」
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