プロローグ

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「おお、おお。よく喋る目覚ましだ。サンタが置いていったのかな」 「…また変なこと言ってる。良いから起きて、ほんとに遅刻しちゃうよ?」 「変なことなんて言ってない。失敬なやつだな。サンタに謝れ」 「うー…なんで怒られてるんだろう私は…」 少女の声のトーンが下がる。 よくよく観察してみれば、目尻には炭素の結晶のような涙が浮かんでいるではないか。 画面の中に居る、男の言い方に、俺は少しだけ腹を立てた。 右手の人指し指に力を入れ続ける。 ある程度一定のリズムで、カチッ、カチッ、という小さな音が、時計の針のように、脆弱な闇の中で俺の時間を刻んでいった。
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