第一話 箱庭の友情

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穏やかな朝日がカーテンの隙間から漏れ、差し込む。そんな爽やかな空気を切り裂くように、突如として甲高い金属音が鳴り響く。 コミカルなキャラクターがプリントされたカーテンや、黄や青など明るい色で統一された机や布団達。そんな愛らしい家具達の中で、モコモコとして寒い季節には中々出られなくなる魔性の「アレ」から、ひょこっと青色の髪を広げた頭が顔を出す。少女はゆっくりと、けだるい体に鞭打って片腕を目一杯伸ばしてみた。 「……ふっ…………クッ!!」 頭上から生えたハンマーをすさまじい勢いで左右に揺らす目覚まし時計に、後一歩で手が届かない。二度寝しないようにと、わざと離れた机の上に置いておいたそれが、今は煩わしくて仕方がない。 (んぁ……自己嫌悪ぉぉぉぉ…) 少女はずりずりと這いずるように布団の中から上半身を出すと、目覚まし時計を抱き抱えるようにして停止ボタンを押した。 ……こういうのは気持ちの切り替えが何より大事、目覚ましを止めてからが勝負なのだ。少女はそのままゆっくりと立ち上がると、はだけたパジャマを直すこともなく洗面台へと向かっていった。 ――――。 「行って来ます!!」 少女は青色を基調とした制服に身を包んで、玄関を勢い良く開いた。一人暮らしだから返事は返ってこないが、昔からの習慣はなかなか抜けないものなのだ。 そして……玄関を開けた先の世界は、なんてことは無い、いつもと同じ景色が広がっているだけ。 朝の澄んだ空気の中で、レンガ作りの町並みは風情が溢れる。朝の汚れない新鮮な空気を通して見る青空。それに浮かんだ大小様々な惑星の姿と、街の中心に位置する、街全体の水源となっている巨大な噴水。どれもがどれも美しくて、侘しい。 噴水がある広場の脇に佇む家から出ると、街の中で1番綺麗な光景が見られるのだ。
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