第1章 10月

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後ろで「おふくさん、お待たせ」と言うマスターの声が聞こえ、ちょっと振り返った。 マスターの縛った髪が目立つ後ろ姿の向こうで、おふくさんと呼ばれた老女は、変わらない笑顔でカップを受け取っていた。 私は、窓から見える景色に誘われて、一番奥の右側からテラスに出た。 入り口と同じ様にガラスのはまったドアがあったけど、開けたまま固定されていた。 そこからは少し冷たいが、気持ちのよい風が入ってきていた。 テラスは斜面の上に張り出していて、太目の木材で組み上げられていた。 木材は私の体重くらいじゃびくともしない頑丈さを感じた。 ただ、幅は店と同じで、奥行きも2、3mくらいなのでテーブルが2つしか置かれていなかった。 そのテーブルも濃い茶色で幅が60cmくらい、対面の椅子との二人用で、店内のと同じもの。 テラス席だけは斜めに置かれ、手前側に椅子を置き、景色を眺めやすくしていた。
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