第1章 10月

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私は木の真下から見上げてみた。 風に揺れる葉っぱの間から光が漏れて、それが深い水の底から見上げた時の水面のように思えた。 そのまま真上を見上げていると軽い目眩がしたので、私はしゃがみ込んだ。 でも、見上げたい衝動があった。 少しして、私はゆっくり立ち上がると、木に背を持たれさせた。 そして、また見上げた。 そのまましばらくそうしていたが、時計を軽く見ると、来た道を戻ることにした。 今度は目の前に広がるパノラマに、また気を取られながら、時間を気にしていない歩調で下った。
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