第1章 10月

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坂を下って、寄り道する前の道をまっすぐ15分ほど歩いたところに我が家はある。 古いけど、リフォームされて新築に見える一応庭付きの3LDKの一戸建て。 1階にはLDKと両親の部屋、2階は私と弟の部屋がある。 父は去年定年して無職で、母は専業主婦。 家自体は、父がおばあちゃんから相続したモノで、退職金がそっくりそのまま使えるということか、父は働いていない。 母もその事に特に何も言わないし、いつも二人で居間にいることが多い。 特に仲がいいという訳でもないけど、二人でいるのが当たり前という感じがする。 本当の夫婦ってそういうものかもしれない。 弟の幸多(こうた)は2つ下の25才で、ソフト会社に勤めている。 システムエンジニアの勉強をしていたみたいだけど、結局は営業をさせられているようだ。 しょっちゅうグチるので聞いてあげている。 今日無職になった私は、中堅の商事会社に大学卒業後勤めていたけど、一般職だったし、特に資格もないし、なんかデリバティブで巨額の損失を出して会社自体の存続が危うい時に、真っ先にリストラされるのは、まあ、仕方ないかもしれない。 そんな4人家族。
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