第1章 10月

38/73
前へ
/760ページ
次へ
私は駅の方へ歩きはじめた。 見上げると、秋の高い空だった。 やっぱりさっき感じた様な穏やかな風だった。 民家の塀の上で黒猫がひなたぼっこをしていた。 私をチラリと見たが特に逃げるでもなく、そこにいた。 私がその前で立ち止まると「なんだ?」という風に顔を上げた。 私はしばし、彼?(多分…そっち希望)と見つめ合った。 目を逸らした方が負け。 10秒もしないうちに、彼はちょっと目を逸らして、戸惑いながら、塀の向こう側に降りていった。 「うぷぷぷ、ごめんね~」 私は口を押さえて笑いながら、また歩き始めた。
/760ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1270人が本棚に入れています
本棚に追加