第7章 春 その2

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帰りの車の中では、サイドウィンドウの夜景を見ながら、また平井優子さんのアルバムを聴いていた。 行きで1枚、往復で2枚。 「マスター」 「はい?」 「彼女のアルバムは全部で何枚あるんですか?」 「11枚ですね」 「そっか」 私は少し呟く様に言った。 そして、 「全部聴きたいです」 そう言ってマスターを見た。 マスターがチラッと私を見た。 そして、 「じゃあ、またナイトクルージングで」 と言った。 「はい」 私は腕を伸ばしてストレッチみたいにすると、またサイドウィンドウの夜景に視線を向けた。 マスターは家まで送ってくれた。 別れ際は、店と同じく、ただ自然だった。
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