第8章 春 その3

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その翌週の木曜にもう一回貸しスタジオで原田智亜美さんと練習とリハをした。 玉江さんはもちろん問題なく、riyeさんもコーラスを仕上げていた。 そして、原田智亜美さんのライブ当日。 渋谷LAZZAは、渋谷宇田川町交番の目の前のビルの7階にある。 エレベーターを出ると、照度を落とした明かりの中、目の前はダーツバーで、右手に歩くとLAZZAの受付となる。 受付を過ぎると突き当たりはオシャレなドリンクバーで、その空間はちょっとしたロビーとなっている。 ドリンクバーから右手に分厚い防音扉があって、そこを入ると奥の左手にステージで、右手が客席、その更に右手にPAブースがある。 入り口すぐ右手には物販席という感じ。 客席は背もたれのある、少しゆったり目の椅子で、長居しても疲れないと思う。 その雰囲気は、確かに、日頃演っているハコとは一線を画すモノがあった。 一線を画すモノ。 それは、見る側の畏敬の気持ち。 ハコ自体は内装にお金が掛かってるかもしれないけど、そんなに違うモノじゃない。 このLAZZAというハコを見る私達が、自分達からの距離感でその存在感のレベルを計っている。 玉江さんの、 『she's loveresが出るハコ』 というコト。 武道館だって、本当はある意味ただの体育館。 だけど、あそこで、私達がまず会えないと思うくらいの距離感のあるアーティスト達が伝説を作るから、畏敬の念が生まれ、そして、その存在感のレベルを上げるのだ。 私は今、私自身特に理由がわからないけど、このハコに畏敬の念を抱いていた。
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