第8章 春 その3

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出演順にリハを済ませて、楽屋で一通り対バンの人達と話した後、私は客席の後ろの方に座っていた。 「叶多さん」 左側から声を掛けられて、智亜美さんが傍に立っていることに気付いた。 「あ、ごめん」 「いえ」 彼女は軽く首を振ると、私の横に座った。 「何を考えてたんですか?」 彼女は少し微笑みながら私を見た。 「えっとね、このハコの存在感を感じてた」 「ああ……」 彼女にはすぐわかったみたい。 智亜美さんの視線はステージに向けられた。 その視線は嬉しさが溢れていた。 私はそれを邪魔しないように、一緒にステージを見つめた。 実際にはほんのちょっとの時間だろうけど、長くそうしていた気がした。
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