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出演順にリハを済ませて、楽屋で一通り対バンの人達と話した後、私は客席の後ろの方に座っていた。
「叶多さん」
左側から声を掛けられて、智亜美さんが傍に立っていることに気付いた。
「あ、ごめん」
「いえ」
彼女は軽く首を振ると、私の横に座った。
「何を考えてたんですか?」
彼女は少し微笑みながら私を見た。
「えっとね、このハコの存在感を感じてた」
「ああ……」
彼女にはすぐわかったみたい。
智亜美さんの視線はステージに向けられた。
その視線は嬉しさが溢れていた。
私はそれを邪魔しないように、一緒にステージを見つめた。
実際にはほんのちょっとの時間だろうけど、長くそうしていた気がした。
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