第8章 春 その3

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「叶多さん」 「はい?」 「今日はありがとうございます」 「ううん。私もここで演れて嬉しいんだ」 「そう言っていただけると安心します」 「ん?無理やり頼んだ気になってた?」 「まあ、それは。だって一回対バンしただけですよ?」 「あ、そっか」 私は大袈裟に口を開けて手を当てた。 智亜美さんがクスッと笑った。 そして、優しい表情で、 「さすが叶多さん」 と、言った。 彼女にも思いは伝わっている。 だからこそ、私は彼女を気に入ったんだと思う。 「もう、それはやめて」 私はまた、大袈裟に口を尖らせた。 それにつられて彼女はけらけらと笑った。 私も。
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