第1章 10月

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そこからは高台の方にゆっくり登っていく感じ。 木のあるところは公園になっているから、その手前まで住宅街が続く。 いつもの公園も景色が良く気持ちが良いので、あの高台の公園にはたまにしか行かない。 上って行こうと思うには、ちょっと心のきっかけが必要かもしれない。 しばらくは両側に住宅が建ち並ぶだけで特に何かがある訳ではないけど、坂を振り返ればそれなりの景色が見える。 高くても2階建ての家が続く中を、その表札を眼で追いながら、手を後ろに組んでゆっくりと足を進めた。 ほとんどの家はコンクリの塀か生け垣で、身長170cmの私でも中が見える様な家はない。 とある家の前で犬が吠えたので、ちょっと飛び上がってみたが、セミロングの黒髪がふわっと広がっただけで、中は見えなかった。
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