4949人が本棚に入れています
本棚に追加
「近藤さんは…優しい人だ」
訝しげる私に斎藤さんは少しムッとして抗議きた。
だがまだ私は納得出来ない。「はぁ」と生返事を返す。
「信じられんか?」
「疑う…というよりはピンと来ない。もしくは納得出来ない…かな?」
「……そうか」
「はい」
「あれは数年前の寒い冬の日のことだ」
「は?」
「俺は修行のため滝に打たれていた」
「待って?斎藤さん待って?何事?」
「余りの寒さに俺は風邪を引いてしまった…情けないことだ」
「斎藤さ~ん?聞こえてますか~?」
「ずぶ濡れで高熱を出し、流石にもう駄目かと思った」
「聞いてねぇし。…てか真冬に滝修行とか馬鹿丸出…」
「左之に聞いた女子を黙らせる方法その2…」
「高熱が出たんですね、はい。そしてどうなりました?」
「…………途方に暮れていたところ、たまたま通りかかった局長に助けられたのだ」
「命の恩人なんですね。ねぇ斎藤さん…」
「まだ続きがある」
「はい、でも…」
「いいからまず聞け」
「……はぁ」
斎藤さんはひとつ咳払いし、相変わらずな無表情を引き締め、再び話し出した。
最初のコメントを投稿しよう!