孤独な魂、温もり求め。

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いきなり髪を紛失し、混乱が如実な斎藤さん。 一生懸命髪がないか頭を触ったり懐を探したり、その辺に落ちてないか見回したりしている。 …混乱した人間って面白いね。 しばらく観察してたけど、必死な眼差しで訴えられたので情報提供。 「食べてましたよ、馬が」 「食べた?」 「はい。斎藤さんが私に説明してくれてる最中にモシャモシャっと」 「……何故言わない?」 「言おうとしたら止めたじゃないですか!『いいからまず聞け』って言ったでしょう!?」 「………そうだったな」 がっくりと、肩を落として斎藤さんは馬にくくりつけていた布団を担ぎ、自室へと消えていった。 その担がれた布団の飾り紐の一つ。かじられた跡があった。 そして馬の口から垂れ下がる赤い飾り紐の残骸…。 良かったね、斎藤さん。 これでまさしく布団と『一蓮托生』だよ。 遠ざかる背に、私は声を出さずにかたりかけていた。 しばらく、馬は使いません。 そう、心に誓いながら。
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