4949人が本棚に入れています
本棚に追加
いきなり髪を紛失し、混乱が如実な斎藤さん。
一生懸命髪がないか頭を触ったり懐を探したり、その辺に落ちてないか見回したりしている。
…混乱した人間って面白いね。
しばらく観察してたけど、必死な眼差しで訴えられたので情報提供。
「食べてましたよ、馬が」
「食べた?」
「はい。斎藤さんが私に説明してくれてる最中にモシャモシャっと」
「……何故言わない?」
「言おうとしたら止めたじゃないですか!『いいからまず聞け』って言ったでしょう!?」
「………そうだったな」
がっくりと、肩を落として斎藤さんは馬にくくりつけていた布団を担ぎ、自室へと消えていった。
その担がれた布団の飾り紐の一つ。かじられた跡があった。
そして馬の口から垂れ下がる赤い飾り紐の残骸…。
良かったね、斎藤さん。
これでまさしく布団と『一蓮托生』だよ。
遠ざかる背に、私は声を出さずにかたりかけていた。
しばらく、馬は使いません。
そう、心に誓いながら。
最初のコメントを投稿しよう!