黒を這う手、掴むモノ。

6/39
前へ
/709ページ
次へ
「何か用か?」 今は深夜。日課の愛刀磨きをしていると、感じる気配。 殺気の無さと居場所から、それが誰なのかに気付いて声をかける。 「ほんまに斎藤はんは気配に敏感やなぁ」 ガラッ。 押し入れから出てくる山崎さん。 ……さっき戻ってきたところだが、一体いつから居たんだ? しかも何故押し入れ? 相変わらず行動の読めない人だ。 思いながら山崎さんの言葉を待つ。と、普段はおどおどするかふにゃふにゃ笑っている表情が、珍しく引き締められていた。 「斎藤はん、何で真子ちゃんに言わんかったん?」 「……」 「クナイ…確かに斎藤はんに投げられたけど、真子ちゃんも狙われてたんやろ?俺等はともかく真子ちゃんまで、敵さんに暗殺対象にされてんのに、何で連れてくんや?」 「…柊は女で、平隊士で、足手まといだが、新撰組隊士には違いない」 「…?」 「それに…恐らく敵の狙いは柊だ」 「!?」 「目的は解らん。だが俺に投げられたクナイとは違い、柊に投げられたモノには痺れ薬が塗られていた」 「敵さんは真子ちゃんを生け捕りたいんか?…だから連れてくんか?餌として?」 声は怒りと動揺を含んでいた。
/709ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4949人が本棚に入れています
本棚に追加