黒を這う手、掴むモノ。

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「……堪忍」 「よいではないか?」 女装した山崎さんを本気口説きにかかるおっさ…男性客。 焦らす様に受け入れようとはしない山崎さん。…まぁ受け入れられちゃっても仰天だけど。 「悪いようにはせん。私の元に来んか?」 「お侍様の元に、どすか?」 「あぁそうだ。私は長州出だが、こちらで仕事を一任される立場にあるのだ。私なら此処より良い暮らしを与えられる!考えてみてはくれないか?」 暑苦し…熱烈なプロポーズ?を口にする侍その1。対して山崎さんは… 「まぁ、長州のお侍様やったんどすか。お仕事大変なんちゃいます?」 やんわり話題を反らしつつ、探りを入れている。……上手い。見習わなきゃなぁ。 「何、大したことないさ。私の仕事は藩のために動くことだからな。仕事は多いがやるべきことがはっきりしているから遣り甲斐もある」 「なんや、楽しそうに見えますなぁ。お仕事、順調なんどすな」 「……順調と言われると、微妙か。新撰組の近藤という男を知っているかな?」 男の言葉に、私の胸が一瞬跳ねた。 しかし山崎さんは慣れているのか、顔色ひとつ変えずに話を促していた。
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