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「厠に行ったんじゃなかったのかい?」
「っ!?」
部屋が急に暗くなったわけじゃなく、いつの間に忍び寄ったのか、背後には先程まで私がお酌をしていた男がいた。
……おっとぉ?
もしかすると私、ちょっぴりしくりましたかね?地団駄踏んでるところ、見られた?
私が焦り気味に男を凝視していると、男はフワッと微笑んだ。
「そんな警戒しなくていいよ?僕は君の敵じゃない。何もしやしないよ」
……何だろ?すっごい落ち着く。
男の容姿は普通なんだけど…この声。
高すぎず低すぎない、柔らかな声音。耳に心地よくて安心する。
……さっきまでの緊張感が嘘みたいに解れて安心したせいかな。
なんだか…
瞼が……
…………
……スゥ…スゥ…
最後に覚えているのは、畳の感触ではなく、大きな掌とやっぱり良い音の笑い声だった。
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