黒を這う手、掴むモノ。

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確か昔の絵師の話だったと思うけど、いたずらっ子な坊主が柱にくくりつけられ、泣いてたそうな。 坊主はその涙でネズミの絵を床に書いて他者を驚かせたらしい。 何でそんなうろ覚えの話をするかって? それはね、現在私が柱にくくりつけられてるからです☆ …何でだこんちくしょう。 まるで私、誘拐された人みたいじゃないか!? …って、あれ? もしかして、みたいじゃなくて、誘拐されたのか? 暗がりの密室で、敵対する男と2人っきり。 んでその直後から途切れた記憶。 柱にくくりつけられてる現在。 うん。 誘拐以外の何物でもないね。 ……………。 っうわああああぁぁぁぁっ!? どどどどうしよう!?誘拐された!私売り飛ばされんの? 「あ、起きた?」 「ふんぬらばぁ!?」 「…何語?」 「わ、私は売り物には向いてません!役たたずだし、貧乏だし、価値無いし、貧乏だし、頭悪いし、貧乏です!!」 「あ~…うん。お金に困ってるのは解ったから落ち着いて?」 落ち着いたやさし気な声音は、記憶が中断される最後に聞いたものだった。
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