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「ち…………、」
実力の差はよく分からない。が、俺の方が上ということは無いと思う。
何せあんな訳の分からない塊を撃ってくるぐらいだ。
立ち位置からしても不利なことは明白。
「くしょうめが……」
左手に握っているナイフ“黒狼”を強く握りなおす。
「そんなに気張らなくていいわ、鎬釵」
右手の日本刀らしき刀の切っ先で俺の眉間をぴたりと示す。軽く数十mも離れていながら、ズレなく、ぴたりと。
……さながら、パズルのピースを嵌めるかのように、正確に。
「お前個人に罪はない。……だからせめて――」
す……、と静かに左手の洋刀を横向きに俺の首の位置へと動かす少女。
「――一撃で、静かで安らかな眠りを約束してあげるわ」
ブレる事すらない、美しい瞬動で、俺の目の前へと移動していた。
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