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嫌だとは思うが、怖いとは思えない。
生きたいと思うが、そう叫ぶことすら許されない。
せめて最後まで、首が貫かれる直前まで見届けようと思った。
――のだが。
「……なぜ、止めたの」
剣先は振り下ろされる過程で“真剣指白刃”によって止められていた。
「なぜ止めたの、と聞いているのよ」
剣先を止めた手で視界が塞がれ、やり取りが見えない。
「答えなさい。こいつは――」
「分かっていますよ」
少女の厳しい声を遮ったのは、恐らく、剣先を防いでくれた当人だろう。
「ですが、」
ふぅ、と溜め息をつき、
「私(わたくし)は構いません。けれど、お嬢様は野宿がお嫌いでしょう?」
「…………?」
何の関係があるのか解らない、と言うような疑問を口にする少女。
もちろん、俺には話が全く見えない。
「発見対象(ターゲット)ですよ?」
「…………え? でも、こいつの“記録”には何の情報も入ってなかったわ」
間の抜けた声で答える少女。
少しだけ、足による拘束が緩んだ。
「“記憶”ではなく、ですか……。それにしても、おかしいですね……」
何がおかしいのか知らないが、早く解放してくれ。
……結構、呼吸苦しい。
そう思った矢先に、足がどけられた。
「お前。今日、誰かから連絡は来なかった?」
……、未だ、人は他に一人もいない。
「ぐ、……はぁ、はぁ。……」
足がどけられたものの、剣先の位置は全くずれていなかったため、動かないことにする。
「電話もメールも零……」
と、答えた瞬間、制服の内ポケットでケータイが鳴った。
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