2.さて……妥協ではなく。

2/8
前へ
/90ページ
次へ
嫌だとは思うが、怖いとは思えない。 生きたいと思うが、そう叫ぶことすら許されない。 せめて最後まで、首が貫かれる直前まで見届けようと思った。 ――のだが。 「……なぜ、止めたの」 剣先は振り下ろされる過程で“真剣指白刃”によって止められていた。 「なぜ止めたの、と聞いているのよ」 剣先を止めた手で視界が塞がれ、やり取りが見えない。 「答えなさい。こいつは――」 「分かっていますよ」 少女の厳しい声を遮ったのは、恐らく、剣先を防いでくれた当人だろう。 「ですが、」 ふぅ、と溜め息をつき、 「私(わたくし)は構いません。けれど、お嬢様は野宿がお嫌いでしょう?」 「…………?」 何の関係があるのか解らない、と言うような疑問を口にする少女。 もちろん、俺には話が全く見えない。 「発見対象(ターゲット)ですよ?」 「…………え? でも、こいつの“記録”には何の情報も入ってなかったわ」 間の抜けた声で答える少女。 少しだけ、足による拘束が緩んだ。 「“記憶”ではなく、ですか……。それにしても、おかしいですね……」 何がおかしいのか知らないが、早く解放してくれ。 ……結構、呼吸苦しい。 そう思った矢先に、足がどけられた。 「お前。今日、誰かから連絡は来なかった?」 ……、未だ、人は他に一人もいない。 「ぐ、……はぁ、はぁ。……」 足がどけられたものの、剣先の位置は全くずれていなかったため、動かないことにする。 「電話もメールも零……」 と、答えた瞬間、制服の内ポケットでケータイが鳴った。
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加