2.さて……妥協ではなく。

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「剣……どけろ。ケータイが取れない」 止めていた手が離れ、少しだけ、剣が上に退く。 ケータイを取り出し、確認してみると、……爺からだった。 …………通話ボタンプッシュ。 『おう、釵!』 「…………」 相変わらずの、活きのいい、渋い声が響く。 『返事せんか!』 「…………」 『まあええわ。そろそろ来客があるじゃろうからな、話はその二人から――』 「――すぅ、遅ぇ!!」 思い切り怒鳴った。 それはもう、一年に一回レヴェルと言って相応しい程の叫び。 『む、もう会っておるのか?』 「やかましい。今日来るんだったら、せめて朝には連絡しやがれ」 『えー、だってぇ。鎬君と話すの恥ずかしいし……』 気色悪っ! 厚紙で首切って死ねばいいのに……。 「てめぇ、次会った時ぜってぇ殺す。てめぇのお陰で絶好調に殺されかけたんだからな」 もしくは、現在進行形。 『ふむ、“鎬”じゃしの。じゃ、そゆ訳で』 「オイコラジジイ!!」 言った時には既に切れていた。 「……………………。で、説明は?」 「私たちはお前の家の居候になる」 ……それだけかい。 簡潔だが。 確かに簡潔ではあるが。 ……はぁ。 ヤな日だ。 「断る権利は?」 「これは、決定事項よ」 「……」 転(くるり)と踵(きびす)を返し、去ろうとする少女。 「待て」 その背中に、声をかける。 「何?」 かなり無防備なことだし、愚劣な選択かもしれない。 だが俺は、何故かこうするべきだと感じた。 「ほらよ」 鍵を投げ渡す。 それに、この二人は俺を置いてさっさと行ってしまう漢字なので、扉ブチ壊されそうで怖い。 「話は帰ってから聞く。住所くらい探せ」 「……」 一瞬、あの嫌な眼になる。 「今、分かったわ」 そう言うと、少女と傍らに立っていた人は、ブレることなく消えてしまった。 どこかへ、と言う必要がないくらいに、行き先は俺の家と決定していそうだった。
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