運命〈はぐるま〉噛み合い、運命〈ゼツボウとキボウ〉動き出す。

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授業の時は起きて―― 「嘘つき」 起き―― 「寝てたでしょう?」 子どもを叱りつける時のような委員長の声。 ……いや、子どもを叱ってる所を見たことはないが。 「心を読んだかのような……」 「実はエスパーだったの。……ごめんね、黙っていて」 何とっ。 「嘘だけれど」 悪戯っぽい笑顔を浮かべる委員長。 「……ですよね」 ま、言い直しておこう。 授業の時もキッチリ寝ていた。 …………知っている事柄を五十分もの間、聞き続けることは、退屈なことこの上ない。 ……決して、退屈は嫌いではないので良いのだが。 本を読んでいようかなぁ、と思っていたりもしたのだが、残念なことに、今日持ってきていた本は、全て読んだばかりだった。 それらを読み返す気にはなれず、結局寝ることにした。……のだが。 「現在三限。任務失敗」 任務内容:放課後まで寝る。 「もう十分寝たでしょう。ノートくらいとったら? 貸してあげるから」 「はぁ、どうも……て、ぅえ。生物がある……。それにしてもお前、本当、いい子ちゃんいうか優しい子ちゃんだよな」 ボソボソと言いながら、突っ伏したままだった体を起こし、一度、大きく伸びをする。 意外にも、教師にバレずに済んだ。 ――俺は基本、いい子ちゃんや、ボランティア活動等をする人間が好きではない。委員長やってるのは点が欲しいからだ、みたいなひねくれた考えが先に浮かんでしまう。他の事も、善に見える行動は全て偽善であり、全て別の思惑からくるものだ、というのが俺の考え方―― 「終わった」 とん、と机を叩き、前の席の委員長に合図する。 「もう!? まだ一分三十二秒しか……」 数えてたお前に驚きだよ。 ていうかお前、授業中に後ろを向くとか、委員長としてあるまじき行為だぞ。 「ちょっと見せなさい」 「話してると怒られるぞ。いいのか?」 「関係ないわ」 委員長がそれ言っちゃダメだろ……。 「……本当に書いてる。でも、何ていうか、すごく人間味のない字ね……。綺麗だけど不自然っていうか」 委員長が、驚きを隠せない、といった調子で呟く。 ……人間味のない、ね。 それは、俺に嵌まりすぎた表現にも思えた。 「シャーペンの字だろ?」 「そうだけど……」 まだ、疑問げな声で呟く委員長。 「では」 「寝ちゃだめよ?」 [俺 = 寝る]の公式でも完成しているんだろうか? 「寝ねぇよ。したい事ぐらいある」 「ふぅん。結局、勉強はしないのね……」 「応とも」 .
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