43人が本棚に入れています
本棚に追加
/90ページ
授業の時は起きて――
「嘘つき」
起き――
「寝てたでしょう?」
子どもを叱りつける時のような委員長の声。
……いや、子どもを叱ってる所を見たことはないが。
「心を読んだかのような……」
「実はエスパーだったの。……ごめんね、黙っていて」
何とっ。
「嘘だけれど」
悪戯っぽい笑顔を浮かべる委員長。
「……ですよね」
ま、言い直しておこう。
授業の時もキッチリ寝ていた。
…………知っている事柄を五十分もの間、聞き続けることは、退屈なことこの上ない。
……決して、退屈は嫌いではないので良いのだが。
本を読んでいようかなぁ、と思っていたりもしたのだが、残念なことに、今日持ってきていた本は、全て読んだばかりだった。
それらを読み返す気にはなれず、結局寝ることにした。……のだが。
「現在三限。任務失敗」
任務内容:放課後まで寝る。
「もう十分寝たでしょう。ノートくらいとったら? 貸してあげるから」
「はぁ、どうも……て、ぅえ。生物がある……。それにしてもお前、本当、いい子ちゃんいうか優しい子ちゃんだよな」
ボソボソと言いながら、突っ伏したままだった体を起こし、一度、大きく伸びをする。
意外にも、教師にバレずに済んだ。
――俺は基本、いい子ちゃんや、ボランティア活動等をする人間が好きではない。委員長やってるのは点が欲しいからだ、みたいなひねくれた考えが先に浮かんでしまう。他の事も、善に見える行動は全て偽善であり、全て別の思惑からくるものだ、というのが俺の考え方――
「終わった」
とん、と机を叩き、前の席の委員長に合図する。
「もう!? まだ一分三十二秒しか……」
数えてたお前に驚きだよ。
ていうかお前、授業中に後ろを向くとか、委員長としてあるまじき行為だぞ。
「ちょっと見せなさい」
「話してると怒られるぞ。いいのか?」
「関係ないわ」
委員長がそれ言っちゃダメだろ……。
「……本当に書いてる。でも、何ていうか、すごく人間味のない字ね……。綺麗だけど不自然っていうか」
委員長が、驚きを隠せない、といった調子で呟く。
……人間味のない、ね。
それは、俺に嵌まりすぎた表現にも思えた。
「シャーペンの字だろ?」
「そうだけど……」
まだ、疑問げな声で呟く委員長。
「では」
「寝ちゃだめよ?」
[俺 = 寝る]の公式でも完成しているんだろうか?
「寝ねぇよ。したい事ぐらいある」
「ふぅん。結局、勉強はしないのね……」
「応とも」
.
最初のコメントを投稿しよう!