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「安心して。温い挨拶は終わりよ、鎬釵」
「!!」
凛とした、冷ややかな、そして何より美しいソプラノの声が響く。
振り向いて見えたのは、少女。
服装は、…………全く興味にがないためによく分からないのだが、色は統一して白。
傾きつつある陽の光を浴びているため、聖者のような雰囲気を纏っている。
しかし、今の彼女を形容するのなら、戦死者を選ぶ女神(ヴァルキュリア)と称すのが最も正しい解答になるだろう。
左手に剣、右手に刀という殺人具を携えた少女こそ、強かな戦乙女(ヴァルキュリア)と呼ぶに相応しい。
気付けば俺は、じりじりと後ろへ下がっていた。
確かに、恐れを持って。
確かな、畏れを抱いて。
不確かな根拠で、しかし確実に、俺は名も知らない彼女を恐怖の対象として見なしていた。
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