プロローグ

10/12
前へ
/25ページ
次へ
「…直接、神殿にいるアイオーンから結城美加さんを取り戻すことはできないのです」 沈黙していたヴィーナスがようやく重い口を開いた。 「ど、どうしてだよ!女神様なんだろ、特別な力か何かで一気にズバッと…」 「そんなことをしたら、あっという間にお話が終わって…、いえいえ、そうではなくて」 …どうも、この女神様、さっきから胡散臭いなぁ…。 「時の神殿内はアイオーンの絶対支配権にあって、私の力は及ばないのです。時の世界の入り口なら、あなたを送ることができるのですが…」 「そんな…ヴィーナスに無理だとしたら、美加ちゃんはどうなってしまうんだ!?」 「たったひとつだけ、方法があります」 「その方法を教えてくれ!」 「『三種の神器』の力を借りるのです」 「『三種の神器』?…単なる思いつきじゃないだろうね」 「あ、愛と美の女神は、思いつきでものを言ったりしません!! …本来ならば、アイオーンの言うとおり、契約を解除することはできません。しかし、『三種の神器』を全て揃えれば、時を自由に操ることができるのです。…つまり、その神器を使えば、あなたがアイオーンとの契約呪文を唱える前の時間に、時を逆戻りさせることが可能なのです」 「…わかった。その『三種の神器』を手に入れればいいんだな?」 「しかし、『三種の神器』を全て手に入れるのは困難でしょう。神器は全て、愛と典雅の女神『カリス』と呼ばれる者たちによって封印されていますから」 「『愛と典雅の女神カリス』?おいおい、また女神かよ」 「そうです。『三種の神器』はひとつずつ、3人の『カリス』の中に封印されているのです」 「そのカリスたちは今どこにいるんだい?まさか、また適当な言葉でポーンと召喚できるとか?」 「…いいえ、それがちょっと厄介なところに…」 ヴィーナスの表情がまた曇り初めた。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加