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刹那、真っ白い光が俺の視界を奪った。
目がくらみ、再び目を開くと、またもや何も見えない。
今度は真っ黒な闇。
目を凝らし、美加ちゃんの名を叫ぼうとしたその時、俺の目の前に美加ちゃんとは別の美しさを持つ女性が立っていた。
美加ちゃんが、暖かい日差しのような可愛いさなら、この女性は凍てつく氷のような冷たさを持った美貌がある。
「み、美加ちゃん…!?」
目の前の女性に見とれて気がつかなかったが、彼女の腕の中には、先ほどまで自分が抱き抱えていた美加ちゃんの姿があった。
「私は、時の女神。アイオーン」
俺が訳も分からず立ち尽くしていると、その女性は穏やかに、しかし恐ろしいまでに冷たく話しかけた。
「お前は『時の呪文』を唱えた。よって、古からの契約により、お前が先ほど望んだ世界、『この娘とお前が決して出会わぬ未来』を、お前に与えよう」
「『時の女神アイオーン』だって?『時の呪文』?あなたはいったい何を言っているんだ…?」
「お前は、『ジカ・ンヨトマーレ・キ・ミーワイマウ・ツクシイ』との呪文を唱えたではないか」
「え?だ、だって、それは…そんな言葉が呪文になっているなんて、知らなかったんだ!」
「…知らぬでは済まぬ。呪文は、それ自体に力を秘めている。呪文を口にした瞬間より、契約は交わされたのだ」
「こ、これは夢だ。夢に違いない。…だってこんなバカなことが…」
「ふん、夢か…。そう思いたくば、そう思うがよい。いずれにせよ、私は契約に従い、この娘を連れ去るだけだ」
「ま、待てっ!美加ちゃんを返せっ!」
「この契約が解除されることはない。お前には、この娘との別れを惜しむ時間を与えてやることもできぬのだ」
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