2人が本棚に入れています
本棚に追加
…
……
………
またもや、俺は白い光に包まれてしまった…。
そして、今度は金髪の美しい美女が、俺の目の前に立っていた。こんなに美しい人は見たことがない…。
しかも、その美しさには、アイオーンにはなかった『優しさ』が感じられた。
「これ、若者よ。何を泣いているのです?」
「………」
俺はこの状況に、またしても立ち尽くしてしまった。そんな俺に、その美女は優しく語りかける。
「我が名はヴィーナス、愛と美を司る者」
「ヴィーナスだって?あのギリシア神話の!?…それじゃ、君も女神様なのかい?」
「そうです。あなたが唱えた、私を呼ぶ呪文。『ミ・カーチャ・ンドコ・イッチャッタンダオー』によって、ここへ来たのです。」
「………………………」
俺は呆れて声が出なかった。
「どうしたんです?黙り込んで」ヴィーナスは不思議そうに俺の顔をのぞきこむ。
「あ、あんた達ねえ…」
「はい?」
「何気なく口にした言葉で女神様がポンポン召喚されるなんて、そんなむちゃくちゃなストーリー聞いたこともないぞ」
「何が無茶なものですか!年端の行かない子供がいきなり勇者になって、世界を救ってしまうお話より、ずーっとマトモです!!」
「…そりゃまあ、そうかも知れないけど…」
…なんか今、うまく丸め込まれた気がする…。
「まあ、それはいいとして女神様、素直に割り切るからちょっと聞いてもらえないかな?」
「どうしたというのです?」
「俺の恋人、美加ちゃんがアイオーンとかいう女神様に連れて行かれてしまったんだ」
「アイオーン!…確かにそう言いましたか?」
「ああ。『時の女神』とも言ってたな。知り合いなのかい?」
「知り合いといえば知り合いですが、知り合いたくもなかった知り合いね」
ヴィーナスの言葉には少しトゲがあるように感じた。
「いいでしょう。この愛と美の女神、ヴィーナスがあなたに手を貸します。こちらへいらっしゃい」
最初のコメントを投稿しよう!