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-序章-
気が付けば、暖かい陽射しに照らされながら、公園のベンチに腰掛けていた。
何故か、前後の記憶が曖昧だがそれよりも気になるものが目の前を過る。
黒い長い髪を掻き、目を瞑って頭を振る。
きっと、疲れているのだろう。
そうに違いない。
「ちょっと!!無視しないで下さい!!」
足元に不思議な物体が飛び跳ねていた。
「もう聞いてますか!!」
「---まだ寝てるんだな、俺は。」
夢ならこんな事態でもおかしくないだろう。
子供位の大きさの白いウサギがラスの足元で跳ねている。
赤いチェックの服を着ていて、小さな身体には不釣り合いなでかい時計をぶら下げている。
しかも、眼鏡もかけていた。
ウサギは懸命にラスの注意を引こうとしているようだった。
「---何かに用か?」
「勿論です!!」
ラスが声を掛けると、ウサギは嬉しそうに顔を輝かせた。
元々動物は好きなほうなラスは僅かに顔を綻ばせた。
それでも、傍から見れば無表情に見えるだろう。
ウサギは変わらず、飛び跳ねていた。
「こっちです!!」
「---?」
嬉しそうな表情(ラスにはそう見える)のまま、噴水の裏手にかけていく。
ラスは仕方なく、その小さな背を追うべく立ち上がった。
彼女が立ち上がると、その背の高さがよく分かる。
長い艶やかな漆黒の髪を一つに結い上げ、髪と同じ瞳は小さな背を見つめている。
全身を覆う黒のロングコート。
コートの合わせ目から覗くブーツも黒い。
右の腰からは細身の一振りの刀が覗いている。
自分でも怪しいとは思うが、これは彼女の趣味ではない。
組織の制服なのだ。
「ラス!!こっちです!!早く来て下さい!!」
「---!?」
流石にラスの無表情も目の前の光景に驚きを隠せないようだ。
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