-序章-

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 不思議と嫌な違和感は感じられないが、それでも身の危険はあるだろう。  ウサギの変わりに現れた青年と共に、ラスは深い深い穴を落下していた。 「---この穴は何処まで続いているんだ?」 「貴女を望む世界に繋がってるんです。」  青年はよく見れば、端整な顔立ちをしていた。  眼鏡ごしに見える切れ長の赤い瞳。  柔らかそうな白い髪に、長い白い耳。 「---?」  ラスは落下しながらとんでもない発見に、目を僅かに見開く。  青年はウサギ耳を生やしていたのだ。  それならば、あの愛らしいウサギはこの青年が化けていたのだろうか。 「---俺は夢に見る程、ウサギ耳が好きだったのか?」  自分でも信じられず、ショックを隠しきれない。 「---貴女、冷静な方ですね。こんな状態なのに悲鳴一つ上げないなんて…。」 「???------ああ、落下しているからな。」  青年は不思議そうに、ラスを見ていた。  これは夢なんだから、死にはしないのだ。  それが分かっているから彼女は騒がないだけだ。 「---それよりまだ、着かないのか?」 「もうすぐ着きますよ、ほら…。」  下のほうから、明かりが広がってきた。  この先に、何があるのだろうか。  ラスは不安も期待もなく、ただ疑問だけを持っていたのだった。
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