逝く道と二人の影

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俺と淋子の2人はふよふよと夜の空を飛びながら、どこかへと向かっている。行き先は淋子任せだから俺には分からない。それより、この体って空も飛べんのか。壁抜けも出来たし、死んでなきゃかなり便利だったろうに。 俺が淋子に『殺された』直後、部屋からの物音を聞き付けたのか、俺の両親が駆け付けた。ドアにかけられていた呪いとやらはすでに解かれていて、いとも簡単に開いた。 そこに見つけたのは床に倒れ、ピクリとも動かない息子の姿。まず母さんが絶叫。呆然としていた父さんも、その声で我に還ると、すぐさま携帯で119番。電話の相手に早口で状況を説明する。それと同時に、俺の体に呼びかけたり、首筋に手を当てている。 そして、通話が終わった後、目を伏せ、首を横に振った。母さんは俺の体に抱き着き、泣き出した。今までそんな泣き顔は見たことがなかった。 俺はとんだ親不孝者だ。
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